ダブルアイランドキッチンの家

内観模型
<計画概要>
所在地 :大和市
構 造 :木造2階建て
敷地面積:111.33㎡
延床面積:129.86㎡
1階:56.78㎡
2階:56.78㎡
ロフト階:16.30㎡
竣工年月:令和3年7月

外観模型1

外観模型2
<作品の特徴>
旗竿敷地で隣地に囲まれた狭小の2世帯住宅である。アイランドキッチンの回遊性を利用し、のびやかなLDKを実現しました。LDKを囲む東、北、西側の3方角の空間が内皮断熱層として外部の環境を緩和し省エネで冬暖かく、夏涼しい環境を実現するように計画した。また、各階のLDKに隣接する部屋との間仕切りや1階と2階のLDKの階層の内皮断熱層は、LDKの断熱だけでなく、1階のLDK1に対する2階のLDK2の床衝撃音、水廻りの騒音の遮断や寝室、子供室の静寂 を保つ遮音を実現し、内皮断熱層の費用対効果を向上させた。

1.はじめに
木造戸建住宅の断熱性能は、昭和55年の住宅の省エネルギー基準の制定以降、幾度かの改正を経てはいるが,基本的には住宅の外周(外皮)に断熱材や断熱サッシを設置することで断熱性を確保する考え方が踏襲されている。また、2021年4月から戸建て住宅のような小規模の建物に対して建築主へ「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下省エネ法) の性能説明が義務づけられ、住宅の断熱化の促進が期待される。さらにZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)支援事業により、外皮断熱性能の向上や省エネ設備、創エネ設備の普及が目指されている。
しかしながら、建物の断熱性をさらに向上するには外皮のみに頼らず、空間構成で断熱を考え、設計の自由度を活かして断熱性を確保できることも重要と考える。このため、空間構成による居室の断熱性のあり方について検討する必要がある。
本設計では木造戸建て住宅を対象として、外皮の断熱性能だけでなく、非居室の空間構成による断熱性能の向上の可能性を検討する。温暖地を対象として内皮断熱住宅モデルを提案し、空調負荷に及ぼす影響を考察するものである。
2.温熱環境設計方法と概要
2.1 本設計における空間構成による断熱の考え方
前述の通り木造戸建て住宅の断熱の既存の考え方は、住宅の外周(外皮)を断熱することによって外部の影響を遮断することである(図1)。しかし、外皮の断熱性能外壁躯体の標準的な厚さを超えて有効に室内空間を確保することは、関東の都市部の密集市街地や狭小敷地においては困難な場合がある。
本設計における戸建て木造住宅の断熱の考え方は、外皮については2021年の省エネ基準を準拠した上で、住宅の空間構成を利用し、居室の温熱環境の断熱を非居室が担うものとする(図2)。すなわち、水廻り、廊下、収納など人が常時いない非居室と、居室と非居室の境界となる間仕切りを断熱したものを合わせて内皮断熱層と称し、エアコンを設置する居室に対して断熱の役割を果たすとともに、空調負荷を削減する住宅計画を提案するものである。

図1 省エネルギー法における断熱の考え方

図2 本設計における内皮断熱の考え方
2.2計算条件
本設計の空調負荷の算出に用いるシミュレーションソフトはAE-Sim/Heatを使用した。モデルプランの仕様は前述の通り省エネ法に遵守して設定した(表1)。エアコン稼動・在室人数・照明・換気等のスケジュールは住宅事業主の判断基準におけるエネルギー消費計算方法の解説に準拠した。内皮断熱層として非居室と居室の境界の間仕切りおよび1階居室の天井に高性能グラスウール14kg厚さ105mmの断熱材を使用した。
また、表4の基本設定では、人体熱負荷はないものとし、発生機器等の顕熱、潜熱は照明器具、空調機のみ設定した。外皮平均熱貫流率(UA)[W/㎡k]を0.50、冷房期外皮平均日射熱取得率(ηAC)を2.2として、省エネ基準を遵守している(表2)。
外皮断熱のみの条件と内皮断熱を加えた場合の空調負荷の比較を次項に示す。
表1 シミュレーションの基本設定

表2 省エネ法の データ




図3 外皮断熱平面図



図4 内皮断熱平面図
3.シミュレーションの結果
外皮断熱のみの条件を図5に示す。外皮断熱による年間空調負荷は全居室合計で203MJ/㎡年となっている。各室の空調負荷の分布をみると、1階LDK1が266MJ/㎡年、2階のLDK2が295MJ/㎡年とほぼ同じ値で、在室時間が長い影響で高くなっている。次に2階の子供室が39MJ/㎡年と高くなっており、その他の寝室は2.5~9MJ/㎡年と低い冷房負荷となっている。
本設計において内皮断熱をした結果、図6に示すように全館の空調負荷は22%削減された。1階のLDK1は65%と最も高い空調負荷削減率になっている。それに対し、2階のLDK2は-4%と空調負荷が微増している。2階の子供室は-37%、その他の寝室は-23~-61%と空調負荷が増えている。この結果は空調負荷の大きいLDK1とLDK2と他の居室を内皮断熱層で区画したことにより、各部屋相互の熱交換が遮断されたためと思われる。

図5 外皮断熱による年間空調負荷
4.まとめ
内皮断熱をするこ とにより、空調負荷は省エネ法により外皮断熱のみの条件より全居室合計で22%の空調負荷を削減し、省エネ効果が確かめられた。1階のLDK1は空調負荷を65%の高い削減が実現できた。その他の居室は空調負荷が増加している。今後は住宅各室のバランスのよい空調負荷削減をするために内皮断熱の箇所と仕様を検討していきたい。

