S邸
<計画概要>
所在地:大和市中央林間
構 造:木造2階建て
延面積:100㎡
建築主:S様
設計・工事施工者:有限会社内藤材木店
温熱環境設計者:有限会社相原聰建築設計事務所
竣工年月:平成29年12月

外観(全景写真)
<作品の特徴>
南方向に大きな開口を設け、北側に廊下、水廻りを配置した、日本の風土に適した標準的な民家である。
省エネ法に基づき建物の外周に外皮断熱層を計画し、さらに内部の間仕切り、階層に内皮断熱層を設け、冷暖房負荷を軽減する工夫をした。冷暖房負荷を各室正確に計画するために温熱環境ソフト(AE-Sim/Heat AD-Cad)を使用し、シミュレーションを行ない年間の冷暖房負荷を想定した。
<断熱仕様の設定>
外壁は和風の金属サイディング縦張り、屋根は金属板平葺き。南側のバルコニーはアルミ既製品。開口部はアルミサッシペアガラスシャッター付き、防犯、メンテナンスに配慮した設計を心がけている。

<内皮断熱設定の主旨>
木造戸建住宅の断熱性能は昭和55年より省エネルギー法で指針が示されています。住宅の外周(外皮)に断熱材や断熱サッシを設置し、平成25年に改正された現在の基準では、UA値(外皮平均熱貫流率)、ηA値(冷房期の平均日射熱取得率)、一次エネルギー消費率 3つの項目で省エネルギーの基準を示しております。
政府は2020年から戸建て住宅のような小規模の建物に対しても省エネルギー法の説明を義務づける方針を出しております。さらにZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)といった制度を推進し、さらなる外皮断熱性の向上や省エネ設備、創エネ設備の普及を示唆しております。この制度に従えば、住宅の建設費は高額になります。
建物の断熱性を外皮のみに頼らず、空間構成で断熱を考え、無理なく断熱性を確保できるようにすることが内皮断熱設定の目的です。
省エネ法の断熱の考え方は住宅の外周(外皮)を断熱することによって外気の影響を遮断します。(図1)しかし外壁は筋交いや設備配管等、構造や設備の部材がある箇所であり、断熱材を過剰に詰め込むことは好ましくありません。水廻り、廊下、収納など人が常時いない非居室がエアコンを設置する居室に対して、断熱の役割を想定しております。又居室廻りの間仕切り壁や天井(内皮)に断熱材を施すことにより、2重、3重の断熱の効果があるかどうかを温熱環境シミュレーションソフトで検証し、非居室空間と内皮により断熱性が向上する住宅計画の提案をしました。(図2)
図1
図2

<外皮断熱設定>

<外皮断熱設定>


<内皮断熱設定>




<断熱効果の比較>


<外皮断熱設定 月別・年間冷暖房負荷表 MJ/㎡月・年>

年間冷暖房負荷 10911MJ
年間冷暖房費 25,749円
温熱環境ソフト(AE-Sim/Heat AD-Cad)を使用し、シミュレーションを行ない外皮断熱設定の年間の冷暖房負荷を想定した。
<内皮断熱設定 月別・年間冷暖房負荷表 MJ/㎡月・年>

年間冷暖房負荷 9,641MJ
年間冷暖房費 22,752円
温熱環境ソフト(AE-Sim/Heat AD-Cad)を使用し、シミュレーションを行ない内皮断熱設定の年間の冷暖房負荷を想定した。
<内皮断熱設定の結果>

採用した内皮断熱設定は上記表からわかるように、冷暖房負荷は省エネ法の設定より内部間仕切り、1階天井に高性能グラスウール14k厚105を設定した結果住居全体の年間冷暖房負荷が12%減少した。居間については20~30%の冷暖房負荷の減少が見られた。建築主のS様からは「冬はエアコンを稼動せず、電気ストーブを多少使用して過ごすことができとても快適に過ごすことができた」と感謝の言葉をいただいた。
